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| ［コラム］ 古代からの歴史を持つ大阪・上町台地の地形を体感する 2025.04.17 このコラムで今までに何度か、武蔵野台地の東端に位置する東京の地形の妙に関する記事を書いてきましたが、今回は大阪の地形についてです。 古代の大阪はほとんど海でした。縄文時代の海岸線は東の生駒山麓や高槻、八尾付近にあり、その海に南から今の上町台地が半島状に細長く突き出して東に河内湾という内海を形成していました。弥生から古墳時代にかけて上町台地の北に砂州が伸び、河内湾は淡水化して河内湖となります。仁徳天皇が行ったとされるこの砂州への堀江の開削は、洪水対策であると同時に航路の開拓につながり、大和川を経て飛鳥の都方面へ船での行き来も可能になったとのことです。 大化の改新後、孝徳天皇は上町台地に難波宮を置き、難波津は瀬戸内・九州方面、さらには大陸との交易の国際拠点港、まさに日本の表玄関となります。初期の遣唐使船もここから出航しました。奈良時代の一時期にも難波遷都がなされ、上町台地は二度も日本の首都になったことになります。平安時代には台地の北（天満橋・北浜付近）の渡邊津からこの台地上を熊野詣の道（熊野街道）が通り、その後、台地地形を巧みに利用して石山本願寺がここで権勢を誇り、さらに秀吉が台地北端に大阪城を築き、その西に水都大坂を建設していったことはよく知られるとおりです。 そうしてみると、上町台地こそが大阪の原点の地と言えると思うのですが、今の大阪の平面的な地図を見る限りでは台地の地形、高低はわかりにくく、これを体感すべく、「大阪・関西万博」開幕前の３月に現地に出向いてみました。 大阪城の天守閣から見下ろせばこの地形がわかるかと思ったのですが、膨大な外国人観光客の波に圧倒されて断念。代わりに近くの大阪歴史博物館に入ったのですが、これが正解でした。ここでは10階が古代のフロアで、難波宮時代の歴史が解説されるとともに、眼下に難波宮跡の発掘現場を含めた上町台地を眺められます。難波宮にも朱雀大路があり条坊制（碁盤の目状）の都市計画がなされていたことも知ることができました。 さて、実際の台地地形を体感するため、地下鉄で少し移動し空堀商店街へ。空堀（からぼり）は、大阪城の南の守りのために掘られた堀（南惣構）で、この商店街は万城目学氏の小説「プリンセストヨトミ」の舞台にもなったところ。この大阪らしい賑わいのあるアーケード商店街を、西の松屋町筋側から東の谷町筋側に向けて進むと上り坂で、台地に上る実感を得られます。ランドセルを背負った下校の小学生たちが坂道をものともせず元気よく走っていきます。地下鉄谷町線が下を走る谷町筋がその名に反し台地上の道というのも面白いところですね（相撲の力士を贔屓する人＝タニマチが由来）。 谷町筋を超えてアーケードが途切れたところに「熊野街道」の道標があります。この「熊野街道」を南へ、上町台地の尾根筋をたどる形で、結局、近鉄上本町駅まで歩いてしまいました。少々疲れたけれど、地図ではなかなかわからない大阪の原点の地形と歴史に触れられた満足感を得たのでした。  大阪歴史博物館10階から見下ろした台地上の難波宮跡  坂道の空堀商店街 |